7月14日、松田美緒さんとギタリストの山口亮志さんによるライブを開催しました。CONTEでの松田さんのライブはこれが2回目。
今回、ポルトガル、ギリシャでレコーディングされたニューアルバム『エーラ』を引っさげてのツアーの一貫で、アルバムが「海」をテーマとしていたことから、海に囲まれた沖縄でのライブを彼女自身、とても楽しみにしていたとのこと。
実際、ライブでは、ポルトガル、ギリシャの歌をはじめ、ベネゼエラ、ブラジル、マケドニア、カーボヴェルデ、アンゴラ、小笠原諸島など、様々な国、様々な地域をわたり、旅するように、松田さんの歌声とともに、観客もその場所へ、その歌がつくられた時代へと連れて行かれるような、そんな不思議な時間をともにしました。
彼女が歌う歌には、共通して、人を愛すること、望郷の思い、生きる喜びと悲しみ、有限と永遠、といった、普遍のテーマが流れています。どの国にもどの時代にも変わらずにある人間の本質が歌となっているのです。そのことを、彼女は、実際に様々な国に旅し、その暮らしや自然に触れ、そこに生きる人たちからそこに伝わる歌を教わることで、自らの内側に歌を宿していきます。そうなるまでは、何度も何度も歌い続けると言います。その歌の背景や歴史を知ることはもちろん、現地でそこに生きる人たちが歌うその土地の歌を、何度も何度もともに歌うことで、歌の中の魂を自分の声そのものに映し込んでいくのです。だから、彼女を通して歌そのものの感情を聴いているような、ライブはまさにそんな不思議な体験でもあったと思います。
訊けば、もともと考古学者になりたかったという松田さん。歴史を発掘し、形として残していく仕事をしたかったのだと。しかし、彼女は一生の仕事して、「歌う」という「形には残らない消えてゆく」ものを選びました。だけど「それがいいなと思うんです」と松田さん。形には残らずとも、心や記憶に確かな形で刻まれるかけがえのない瞬間が、彼女の歌にはあります。心が鷲掴みにされるような、初めて聴く歌なのに、遠い記憶がふっと蘇るような、そんな歌の数々。特に彼女が選ぶ歌は、それぞれに土地の記憶や帰りたい故郷を持っている歌ばかりです。目には見えない繋がりやどこかの土地のかつての誰かの想いは、そこでしか生まれ得ない、そこでしか感じ合えない、形のない「歌」だからこそ、こうしてより強く、心にひしひしと伝わってくるのだと思いました。
松田美緒さんの歌を、またぜひCONTEでと願っています。
素晴らしい歌の旅、ありがとうございました。