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絵本『旅のネコと神社のクスノキ』発売記念 黒田征太郎トークショー(2022.11.5)

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絵本『旅のネコと神社のクスノキ』は、黒田征太郎さんが「旧広島陸軍被服支廠」を訪れたことがきっかけで生まれた絵本です。
この絵本に描かれているのは、広島に落ちた原爆の8月6日を挟んで、その前後の1ヶ月、1945年7月から9月という2ヶ月の時間。
その中で、どんどん戦争がひどくなり、多くの命が奪われ、何もかも失われていく。しかし守ってくれたのは山であり、草木が生えている。そのことを、被服支廠のそばにあった「神社のクスノキ」と「旅のネコ」の会話が教えてくれます。

戦争とは何か、何が起きたのか、何を未来に託すのか。
それを、人間ではないものたちの対話によって語られるのです(文は作家の池澤夏樹さん)。

先週の11月5日、この絵本をつくった黒田征太郎さんをCONTEにお迎えし、トークイベントを行いました。
黒田さんは、自身の戦争体験と重ねながら、広島、長崎、そして沖縄のこと、野坂昭如さんとの話、ピカドンプロジェクトのことや、被服支廠を何度も訪れ、どうしても絵本にしたいと願ったこと、それが池澤さんとの出会いになったことなど、黒田さん曰く「とても正直に」お話いただきました。
そして、どれほどに自然が偉大であるのか、絵や音楽、アートというのは、その自然から生まれているのだということ、自然そのものであるということ。そんな、毎日毎日絵を描き続けてきた人の実感とも言える言葉が、大切に語られていきました。

トークの後は、松永誠剛さんのコントラバスとピアノ演奏とともにライブペインティングが行われ、画用紙の中には、目の前で、さまざまな色や形をした一輪の花が次々に生まれ、色鮮やかな鳥が何羽も飛び出していきました。本当に命がそこで生まれるかのように、瑞々しくて尊くて美しかった。
私たちは、この絵本を通して、そして、黒田さんと過ごしたこのイベントでの時間を通して「託された」のだと思いました。

この絵本は、最後、こう描かれます。

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自分たちはもうしかたがない
でもまたこどもはうまれるし 
こどもはそだつ
そのときに草や木から
力をもらおうとおもって
みんな草のあいだ
木の葉のあいだから世界を見ている
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何度も何度も、この絵本を開いて、そして、この日の黒田さんの言葉やライブを思い出して、戦争の愚かさ、自然への敬意、そしてここから未来を作っていくことの大切さを考えていきたいと思います。
かけがえのない夜となりました。
ありがとうございます。