長野県軽井沢で作陶されている岡野里香さんの陶展「雨の旅」を開催しました。
一昨年、ご家族で沖縄旅行にいらっしゃった岡野さんが、雨の中、CONTEに来てくださいました。それがきっかけで、今回の陶展「雨の旅」が実現。
その旅でのインスピレーションをもとにつくられた作品たちが並びました。
それが新作「Into the Stone」でした。
その「創作メモ」。
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初めに目を瞑る。
土と手に委ねて、形はできてゆく。
頭の中では、身近な山を日々歩くような感覚で、穏やかな上り坂、下り坂を土肌へ小刻みに叩いてカタチにしていく。
ここだな、と思ったところで目を開けると、石のような形が目の前にある。
予定調和と、いつもの自分から抜け出す方法として、今回試みた実験。
そして今回初めて試みたのは、塊をくり抜くこと。
題名の「Into the Stone」は、石のようにカタチを乾燥させながら、中を掘り出していく過程からのイメージ。
皮一枚になる時の、表と裏の手に伝わる感覚が好きです。
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この創作メモから、1人の作家が自身の新境地へと向かう様が窺えます。
ここに至るまでの過程は、研ぎ澄まされた感覚と、同時に、これまでの経験があってこそ生まれた地平でありながら、その経験に基づいたものを壊す作業でもあり、なんとも興味深いです。まだ見ぬ場所へと創作を進めながら、それが、すでに「石のようなもの」という、すでに悠然と「ここにある自然」と重なっていく面白さ。でありながら、やはり、どこにもない、唯一のものが生まれる、という不思議。
実際に並べられた作品のフォルムのユニークさ、色の美しさには多くの方々が魅了されていました。
展覧会では、新作「Into the Stone」をはじめ、約50点が並びました。作品を見ているだけで、森や湖、地球や海、光、風、蠢き、波動、とさまざまなイメージが繋がっていきます。また、岡野さんの作品は、見る角度によって、そして触れる場所によって、さまざまな表情を見せてくれるので、縦横斜め、上から下から、と、じっくり、ご覧になる皆さんの姿がとても印象的でした。
岡野さんには初日と2日目に在廊いただきました。岡野さんに会いに、県内の陶芸家の方々や、沖縄県立芸術大学の学生たちが多く訪れ、新しい交流が生まれたことも嬉しかったです。
ふと、出会う、そのことがご縁となって、繋がりを生んで、それが人生を豊かにしてくれることって、多々ある、と思っています。毎回展覧会を開催する時は、これが誰かにとってそんな出会いになったらいいなあと、そう思った展覧会でした。