中原仁さんと川口大輔さんを迎えてのトーク&ライブ「アントニオ・カルロス・ジョビンを語る、弾く、時々歌う」。
誰もが知る名曲「Garota De Ipanema(イパネマの娘)」の演奏から幕が開き、その美しくも軽快な調べに導かれながら、ボサノヴァってそもそもどんな音楽なのか、そして、ジョビンとはどんな人だったのか、そんな話を、中原さんの詳しい解説と川口さんとの語りで進んでいきました。
ブラジルには何度も足を運んでいる中原さんの撮影したリオデジャネイロの写真もスライドで映しながらのエピソードは、リオを旅しているような気分に。
ジョビンを敬愛する川口さんは、今回、数々の楽曲の中から11曲をセレクト。
「悲しみには終わりがない、幸せには終わりがある」という印象的な歌詞で始まる「A Felicidade(フェリシダージ)」では、「Tristeza nao tem fim, felicidade sim」と、コーラスをお客さんにも参加してもらったり。川口さんの語りかけるような優しい歌い方と、お客さんの瑞々しい声が重なって、とてもいい時間が流れました。それを聴いて、「ブラジル人の音楽の楽しみ方は、自分が歌うことなんですよ」と中原さん。
また、クラシックに大きな影響を受けているジョビンの話からは、メロディの美しさ、和音の美しさを堪能してもらいたいと「Chovendo Na Roseira(バラに降る雨)」を披露。そして、海と緑に囲まれたリオに生き、自然を愛したジョビンの自然讃歌「Aguas de Março(三月の水)」。こちらも名曲中の名曲ですが、川口さんも「この曲はありとあらゆる名詞をラップまではいかないけれど、言葉を連ねていく曲なんです」と説明。しかも、繰り返しに聴こえて、「コードもメロディもどんどん入れ替わって展開していく恐ろしい曲」なのだそう。そんな話を聴いた後に、実際に目の前で演奏を聴くと、楽曲の緻密さ、構成の美しさ、ポルトガル語の言葉の重なりが惚れ惚れするほど気持ちよく、それが不思議な臨場感となって伝わってくるのがわかります。これが名曲と呼ばれる所以か、と深く納得するのです。観客からも大きな拍手!
第二部は、「Meu Amigo Radames(私の友達ハダメス)」の演奏でスタート。ジョビンの心の深淵に触れるようなメロディに聴き入り、そして、「Wave(波)」へと続きます。東京に拠点に活動している川口さんですが、ここ1年ほど、沖縄の東海岸にも拠点を置いていることもあり、東海岸で見る波を重ねたアレンジを施した「Wave」は、ここでしか聴けないスペシャルなものになっていました。
そして、リオデジャネイロへの賛美を重ねる「Samba do Avião(飛行機のサンバ)」。飛行機がリオに到着するときの、リオの街、リオの自然の素晴らしさを歌ったこの歌に、「作曲家としても素晴らしいのですが、詩人としてもすごく文学的なセンスを持っているんです」と中原さん。スライドにはコルコバードの丘から見るリオの街並みや海岸の写真が映し出され、その「コルコバード」がタイトルとなった「Corcovado」で公演は幕を閉じました。
どの楽曲も、それぞれの背景やジョビンの人物像について知りながら聴くことで、より深く、ジョビンの世界へと誘われ、なぜ彼の曲がこれほどに世界で愛されているのか、ひとつひとつ感じ入るような大切な時間でした。
ある意味、とてもマニアックな内容のイベントでありましたが、中原さんと川口さんが、ジョビンをテーマに、語り、弾き、歌うと、ジョビンの人生、そしてジョビンの音楽がとても身近に感じられ、これがさらなるブラジル音楽への扉を開いてくれるきっかけになったのではないかと思います。あらためて、しっかり聴き直したいアルバムがたくさんです!
また、今回、ブラジルには行ったことがない店主・五十嵐による、CONTEの妄想ブラジル料理プレートもお出ししました。こういう機会をいただけるのもイベントの楽しみです。
中原さん、川口さん、素晴らしい時間を、本当にありがとうございました!
【セットリスト】
Garota De Ipanema
Samba De Uma Nota Só
A Felicidade
Chovendo Na Roseira
Sabiá
Água De Março
Meu Amigo Radames
Wave
Piano Na Mangueira
Samba De Avião
Corcovado