ハシケンさんとはこれまで様々なスタイルでライブを開催していますが、今回は「一人で二人会」という初めての試みでした。
一部は、アルバム『ひとつ』を中心に、「ギターと歌」でオリジナルとカバーを織り交ぜながらのライブ。ハシケンさんの歌声のふくよかさ、力強くも繊細な表現力は、ますます研ぎ澄まされていて、歌の物語の中に観客をグーッと引き込ませていく様は圧巻でした。そしてハシケンさんのすごいところは、声なき声、ゆらぎまでもが「歌」として聴こえてくるところだと思います。その中に、深い哀しみもあり、湧き上がるような生きる力もある。歌というのは、目には見えない心を届けることなのだと、改めてそんなことを思わせました。しみじみと沁み、そして、鼓舞されました。
そして、二部は、ギターを三線に持ち替えてのライブ。沖縄民謡の唄者・照屋政雄さんを師に持ち、現在、奄美群島の沖永良部に暮らすハシケンさんは、沖縄、そして、奄美の唄の心を受け継ぎ今に伝える人でもあります。敬愛する嘉手苅林昌さんの「白雲節」は、歌詞を自身の言葉で訳し、また、奄美のシマ唄の代表曲とも言える「行きゅんにゃ加那」の歌詞を、そのメロディに重ねて歌うなど、ハシケンさんだからこその唄となっていました。また、講談を学んでいるハシケンさんがこの舞台にかけたのが、徳之島を舞台とした「ワイド節」の誕生秘話の「語り」。唄が生まれる背景にあった悲しい出来事、徳之島の闘牛場の熱気、そして唄を生み出される時の熱く込み上げてくる想いが、彼の語り口によって、臨場感を持って浮かんでくるのです。そしてその後に聴いた「ワイド節」の力強さに、胸つかまれる想いでした。
素晴らしいライブだったと思います。最後、来ていただいたお客様に、CONTEでも何度も演奏してくれているからか、店の響きとハシケンさんが一体となっているような印象を受けたと言ってもらい、信頼を重ねてきたからこそと、嬉しく思います。
ハシケンさん、心震える時間を、どうもありがとうございました!