8月20日は、旅する編集者の藤本智士さんをお迎えしてのトークショーを開催しました。
藤本さんは関西を拠点に、日本全国を旅しながら、雑誌や書籍をつくったり、イベントをつくったり、「地域編集」を行なっている編集者です。一方、聞き手のCONTEの川口は、東京で20年近く、音楽や映画、ファッションと言ったカルチャーをメインとした雑誌を作っていて、そして今は、沖縄で店を営みながら雑誌づくりをしています。「編集」が持つ面白さを知る人、「編集」の力を信じる人との対話はやはりとても面白く、藤本さんがつくってきた雑誌「Re:S」や「のんびり」などについて伺いながら、そこから見えてくる編集哲学を、笑いながら、頷きながら、じっくりとさせていただきました。
今回のトークショー、満席をいただき、さまざまな職業のお客様の前でも「編集とは何か」が伝わるよう、事前にどんな流れにしようか打ち合わせしようかと思ったのですが、私たち共通の恩人である笑福亭鶴瓶さんから学んだのは、決めないこと、今、起きることを面白がること。そうすることで、予定調和ではない、今ここにしかない物語が紡がれていくことを、私たちは編集という仕事を通してよく知っています。
だから、打ち合わせなし、行き当たりばったりでトークしましょうということにして、何も決めずにトークショーにのぞました。
編集って、掛け合わせ、組み合わせ、その開き方、で、いくらでも違ったものになっていきます。それをトークショーというものに置き換えると、沖縄のCONTEで、藤本さんと川口、という組み合わせでしか生まれないものを楽しむ、その心積もりが同じであれば、きっと面白いものになるだろうとの信頼感もありました。
私は、書籍や雑誌をつくるとき、その本を読み終えた後、読む前よりも、少しだけでも世界が違って見えたらいいなと思っています。より世界が広がる、より世界が面白く思える、より世界の深さが見てくる、そうすることで、その先の未来は変わります。藤本さんも「編集は、未来のビジョンの実現にこそ、そのチカラを発揮する」と言います。編集って、本や雑誌をつくるためだけにあるわけではないのです。だから、藤本さんは地方を巡り、地方のいろんな人たちと出会い、編集の面白さを伝えながら、世の中にもっと編集者が増えることを望んでいるのだと思います。実際、こんな店があったらいいな、とか、こんなイベントをつくりたいなとか、こんな地域や街になったらいいなというのは、店やイベントをつくることが目的ではなく、どんな未来をつくるのかということだと思うのです。そのビジョンの実現に、まさに編集力は役立ちます。
私たちが編集者として歩んできて感じてきたことをお話することで、少しでも編集の魔法が皆さんに伝わってくれていたらとても嬉しい。そんな想いで、楽しくお話しさせてもらいました。
そして、大事なこと! 今回、藤本さんの新しい著書『取り戻す旅』には、その内容自体に、様々な編集哲学が散りばめられていますが、本の印刷や本の届け方に、新しい試みがなされています。その「カルチペイ」という仕組みについても、ぜひチェックしてください!(次に出すCONTE MAGAZINEではやってみたい!)
お越しいただいた皆様、そして、今回、イベントを企画してくださったアイデアにんべんの黒川真也さん、ありがとうございました。
またこういう編集トーク、やってみたいなと思います。